絵画Ⅰ、初めての鷹の台キャンパスは眩しすぎた。
絵画Ⅰスクは、武蔵美鷹の台校で受ける初めてのスクーリングだったので、緊張しつつも、かなりドキドキわくわくでした。
前提講義のあと移動した場所は4号館2階。三角屋根の箱が連なったような形の特徴ある建物で、光がたくさん入る、とても気持ちのいいアトリエです。
課題は静物デッサンと油彩で、前半3日間でクロッキーと鉛筆または木炭デッサン、後半3日間で油彩を制作します。
絵画Ⅰの木炭デッサンで用意するもの
前半3日間は鉛筆または木炭デッサンです。わたしは木炭デッサンを選びました。用意するものはこんな感じ。念のため何に使うのかも書いておきます。
・カルトン……画版。同じ大きさの画版が2枚繋がっていて、木炭紙を挟んで持って行ったり、保存するときにも使います。昔、高校生や予備校生のときに使っていましたが、今回は新素材の軽いものが出ていたので購入してみました。
・MBM木炭紙……4~5枚。木炭紙は1枚ではなく、下に2~3枚重ねてクッションにして描きます。
・木炭……太さや硬さ、木の種類が違うものなどが販売されていて買うときに迷いますが、伊研というメーカーのヤナギのものが一般的です。よく見る、モノトーンのストライプの箱ですね。3本組なので、それひと箱あればじゅうぶん足ります。
・芯抜き……細い金属棒と、ワイヤーにブラシがついたものがセットになって売っています。最初に金属棒を木炭に差し込んでストロー状に穴を空け、ブラシをお尻から刺して中を広げるように掃除して芯を抜きます。色の違う柔らかい部分が全部取れれば完成です。
・はかり棒……使わない人もいますが、細い長めの棒があると便利です。芯抜きの棒を代用してもいいし、鉛筆デッサンのときは長めの鉛筆を使ったりもします。予備校時代は、自転車のスポークをどこからかもらってきて使うのが定番でした。目盛りのついた2つ折りの「はかり棒」という商品も売られてますが、目盛りなんてまず見ないし(というかよく見えない)、あの折れてるのをどのように使うか、わたしは最後までわかりませんでした(笑)。
・食パン……つきすぎた木炭を取ったり、白くするときに使います。うっかり買うのを忘れていたので、『エミュウ』に行って、「食パンください」と言うと「売り切れです」と断られましたが、半分諦めつつ「木炭デッサンで使うので、1枚でいいんですけど……」と言うと「あ、消しゴムですね。それならあります」と、棚から出してくれました。鷹の台では「消しゴム」と呼ばれているようです。プチ情報です。
・練りゴム……木炭デッサンではパンを使うので基本的に使いませんが、パンが手に入らなかったときの間に合わせや、最後にキュッと白く抜きたいときなどにこっそり使ったりします。
・ガーゼ布……木炭を紙に馴染ませたり、ぼかしたりするときに使います。すぐ黒くなりますが、外でポンポンとはたけばまた使えます。
・指……結構大事なツールです(笑)。指で押さえたところが意外といいタッチになるので、よく使う指(利き腕の親指など)は怪我などしないように気をつけて当日まで過ごしましょう。
絵画Ⅰの前半3日間は静物デッサン
静物のモチーフは、座卓(あるいは応接テーブル)ぐらいの低い台の上に組まれます。教室の端と端の2か所に、壁に着けるようにテーブルが置かれ、その上には、描くのがめんどくさそうなチェックの布や形の複雑そうな楽器、果物や野菜、瓶、何か用途のよくわからない機械、などなど。たくさん置かれていて、「これ全部!?」と一瞬ひるんでしまいますが、大勢の学生が自分の描きたい部分をトリミングして描くためなので、全部描かなくても大丈夫。
まずは立って回りながらクロッキーをして、最終的に、描きたいテーブルを選び、描きたいアングルで自分の場所を決めます。とはいっても人数が多いので(20人以上はいたでしょうか)、室内の空間にそれぞれがイーゼルと自分の椅子と、ちょっと道具でも置けるスペースを確保してしまうと、それだけでぎゅうぎゅう詰めになってしまうため、必然的に、ちょっとずつ妥協しながら譲り合ったりして、空いているところに座ることになります。
わたしもなんとか、メインのモチーフであるワークブーツとワインボトルが中央に見えて、葉っぱをふさふさと茂らせたとうもろこしが手前にある場所を確保しました。わたしが選んだテーブルはこんな感じでした。
静物画を描くときの場所取りのコツは?
このように、人数が多い場合は若干難しいですが、わたしが日頃心がけている、場所を決めるときのコツみたいなものをちょこっと書いておきます。
・できるだけモチーフの近くに座る。
デッサンが初めてという人を見ていていつも思うのは、モチーフから距離を取りすぎているということです。ちょっと近すぎるかなというぐらい近くに座ったほうが、迫力のあるアングルになるし、ものの質感や光の加減などが詳細に見えます。また、「この角度が好き」だからと距離を空けると、前に人が座ってしまい、結果見えなくなる、ということも起きてしまいます(今回も実際にありました)。
・いちばんメインで描きたいものが、描きたい角度で見える場所を選ぶ。
つまり主役をまず第一に考える。物と物の位置関係は、画面上で移動させることができます。それよりも、そのモチーフがいちばんカッコよく見える角度を、じっくり見て描ける位置を選ぶことが大事です。
・慣れないうちは、光と影が半々の場所を選ぶ。
自分の背後から光が当たっている(モチーフに全面的に光が当たっている)「全光」、モチーフの向こう側から光が当たっている「逆光」などは、光や形をとらえるテクニックが必要です。慣れないうちは、たとえば左の窓から光が入って左半分が明るく、右半分が暗いといった、「順光」の場所を選ぶと、光も形もとらえやすいです。
あと、驚いたのは、静物デッサンの期間中は、最後に帰る人は冷房は切らないようにと注意されたことです。冷房を切ると気温が上がって、モチーフの野菜や果物が傷んでしまうためなんですね。たしかに、夏の暑い真っ盛りだと、食材は冷蔵庫に入れますもんね。
こういったとき、モチーフによく登場するとうもろこしですが、最終日あたりには、カサカサのカラカラになって粒の形がすっかり変わってしまうので、早いうちにしっかり観察しておいた方がいいと思います。
絵画Ⅰのヒヤリングを機会に、自分の制作人生をふり返る
絵画Ⅰの前半は、初めてご指導いただくK先生でした。穏やかで優しい人柄の方です。大学側のカリキュラムで定められているのか、K先生の判断なのかはわからないのですが、デッサン中に一人一人ヒヤリングして回られました。武蔵美を受けようとしたきっかけや理由、経験などを一人一人に聞いてゆくのです。
おそらく、先生方が共有する指導データになるのだろうと思いますが、これによって、自身の気持ちをふり返るいいきっかけになりました。また、他の受講生たちのヒヤリングも聞こえてくるので、自己紹介し合わなくても、他の人のいきさつなども自然と知ることになり、打ち解けた空気になってきました。ちなみに、こんなふうに、形式として一人一人のヒヤリングが行われたのは絵画Ⅰのみ。あとは絵画Ⅶの自由制作までは行われなかったと記憶しています。
4日めから使うキャンバスを空き時間に張るつもりだったので大荷物を抱えて通学。家からホテルに送った木枠とカットキャンバス、キャンバス張り道具などを、荷物の少ない2日目に持っていきます。
予想外だったのは、授業が終わってから教室にいられる時間が意外と短いということ。17時半に終わって、18時か18時半の錠時間に出なければならず、その短い間に作業をしなくてはいけないのでけっこう忙しいです。
ちなみに、通常は張りキャンバスを買って持って行ったり、構内の世界堂で予約しておいて授業前に購入したりするのが一般的。わたしはキャンバスは自分で張るものと思っていたのと、ホテルではできないのとで学校に持って行ってやりましたが、こんなことをしている人は他にいませんでした……。
まだ2年生だけど、一足早く卒業制作の説明会を聞きました。かなりためになりました!
スクーリング中はいろんな説明会や懇親会などが目白押しなので、予定が合えば参加することにしています。
絵画Ⅰ、後半3日間は油彩
さて、後半3日間は油彩です。描いてない方のテーブルのモチーフを描くことになるかと思い、どのように構成するか考えていたのですが、4日目の前提講義のあとに教室に入ると、前日までのモチーフは2か所とも、別のものにすっかり組み替えられていました。
ちなみに、先生も交代。初めて教わるO先生です(ほとんどの先生が初めてですが)。
手順は同じような感じで、やはりいろいろ動きながらクロッキーをして、最終的に自分の場所決めをします。今回は逆光の場所を選びました。
バックの色がなかなか決まらず、モチーフに使った色を混ぜたりしてこうなってしまったけど、実は「この色がなんか嫌で……」と言うと、「気に入ってこの色にしたのかと思いました。いやだと思った色は、変えた方がいいですよ」と先生。この先生には絵画Ⅳの油彩でも指導を受けることになるのですが、やはり、使う色についての考え方を指導していただきました。
学校の行き帰りに逢う猫のキュウちゃん。自転車のカゴが涼しくて、いつもここでお昼寝をしています。人懐こくてかわいいです。
若葉台団地駅から大学までの徒歩の道。玉川上水の遊歩道を通って行けることも、毎日の癒しになりました。