今年も『マスだ!展』が始まりました!
『マスだ!展』というアートの展示をご存知ですか?
画像を見たら、「ああ、あれね!」ってわかっていただけるかもしれません。
銀座の『K’s Gallery』で、毎年、新年を祝って開催される恒例の展覧会です。
どういう展覧会かというと、こんな感じ。これ、ちっちゃい升が、ずら〜っと並んでるんです。可愛いんですよ!
全体の雰囲気がとてもよくわかる、いい写真ですよね。写真家の土屋朝美さんが撮ってくださいました。
土屋さんは、ふだんは自然の多い場所で動物たちの写真を撮られている写真家さんで、数々の賞も受賞されている実力の方。いつも素敵な笑顔でお話も楽しくて、土屋さんの撮られた白鳥の赤ちゃんとお母さんのショットには、その親しみやすいお人柄が溢れています。
きっとこの写真も、ニコニコしながら撮ってくださったんだろうなあと想像できます。
『マスだ!展』は、銀座K’s Gallery の新春恒例企画展
さて、その『マスだ!展』も、今年で15回目を迎えました。
開催している『K’s Gallery』は、銀座一丁目のビルの6階にあります。
オーナーは増田きよみさんという女性。
増田? 『マスだ!』? 察しのいい方はもう気付かれたでしょう。
そう、オーナーの名前にちなんだ展覧会というわけです。
升と言えば、本来の用途は、お酒を飲む食器ですよね。升酒というと、お祭りなんかで豪快に飲む感じがします。
増田さんは知る人ぞ知るお酒ツウ(たぶん。違ってたらごめんなさい)。
今年で15回目を迎える『マスだ!展』ですが、始まった当初は、オープニングで大きな樽酒が用意され、それを割って、みんなで升酒を飲んでお祝いしたそうです。酒呑みらしい(失礼)洒落た演出ですよね。そして、楽しそう! でもその習慣も、コロナのため無くなってしまったとか。
そんなお祝いをしていた当時を、知らないことが残念でなりません。また復活しないかな。
でも今年は、樽酒とは行かないまでも、オープニングレセプションが開催されて、みんなでお祝いしました。ギャラリーで用意してくれたお酒とおつまみ、それに、事情をよくわかってる方が気を利かせてお酒を差し入れしてくれたり。それを見て「ああ、俺も持ってくればよかったなぁ」とおっしゃってる方もいました。わたしも、出かけるとき迷ったんですよね、好きなスパークリングワイン持って行こうかなと。その前に寄るところがあったので、残念ながら持って行けませんでしたけど、女性の皆さんがワインをよく飲んでいらしたので、やっぱ持っていけばよかったかなぁと思いました。次回こういう機会があったら、ぜひ持参しようと思います。
『条件は升を使ってアート作品を作る』こと
作家それぞれの個性が光る『マスだ!展』ですが、出展の決まりは簡単です。
「升を使って作品を作ること」これだけです。毎年秋頃に募集が始まるので、K’s Galleryに行って申し込みをして参加費を払えば、檜の一号升を4コもらえます。それを各自持ち帰って、好きな作品に仕上げるのです。失敗したり、もっと作りたかったりして4コで足りなければ、1コいくらかで分けてもらえます。また、升を自前で用意したい場合は、升代のぶんを参加費から引いてもらえます。
その他、もっと詳しく知りたい!という方はこちらをご参照ください。
抽象画専門のK’s Galleryは、オーナーの増田さんのキュレーションのもと、抽象画家の個展やグループ展が開催されることで有名ですが、『マスだ!展』は、申し込めば初めての人でもわりと参加できるタイプの展示です。いつかK’s Galleryで展示してみたい人が会場の感覚を掴むためや、また、抽象画家としてやっていきたい人の入門としても、挑戦してみるといいのではと、わたし個人的には思っています。
わたしも、昨年初めて申し込みして参加しました。
一昨年、先輩のご紹介で増田さんとご縁ができ、『マスだ!展』のことも知り、ぜひ参加してみたいと思ったのです。このちっちゃい升で、いろんな作家さんがそれぞれ作品を作るというのが、なんだかすごく面白そうですよね。
『第15回マスだ!展』石倉かよこ作品はコチラです!
そんなわけで、今回のわたしの展示作品は、ジャ〜ン! こうなりました!
まず心がけたのは、このところの課題である「ピンク」を基調に全体をまとめること。これは第一条件。
そして、遠くから全体像が大きな構図として見え、近くで見ると「なるほど、こうなってるのか!」と新たな発見をしてもらえること。
そしてそして、こっそりですが自分自身に課していたのは、とにかくもうパッと目立つこと。つい細部を盛ってしまう癖があるので、細かいところにこだわるより(ディテールも大事ではありますが)、まずは「あ!」と感じていただけること。
このあたり、昨年の作品とは一味違う感じで仕上げられたと思います。
仕上がって展示してみると、いやもうちょっとこうすればよかった、みたいなことは思い浮かぶのですが。。。
Squareの構図、フローティング処理、ミニ作品制作の感覚などを養える
制作者の立場から言えば、『マスだ!展』には、いい点や、学べることがたくさん詰まっています。
あげればたくさんありますが、主に次のような感じでしょうか。
Squareの構図・構成
まず、Squareな画面の構図・構成、作り方が身につきます。
最近、正方形の絵ってよく見かけますよね。制作者やアートファンの間では、ずいぶん前から定番なのですが、ここ数年、これまでアートにあまり縁がなかった人や、初めて絵画を購入する人たちの間でも人気が高まっています。わたしも、注文画を制作する時「正方形で」とリクエストをいただくことが増えてきました。正方形の構図は、長方形に比べてポイントが作りにくい、黄金比が取りづらいなど、作品として成立させるために結構苦労します。升は真上や裏から見るとまさに正方形ですから、Square構図の作品を作る訓練になります。
画面の側面処理
BOX額って、見たたことありますか? たとえばS0号など正方形のキャンバスやパネルを、一回り大きいやはり正方形の、箱の中央にセットしたような額装です。キャンバスやパネルの縁を覆わずそのまま露出した形でフレームの中にセットするので、側面の厚み部分もしっかり見えてしまいます。
余談ですが、このBOX額も使い始めた当初は入手し辛くて苦労しました。作っているメーカー自体が少なく、額縁屋さんでの取り扱いもあまりなかったのですが、最近ではちょっと検索すれば簡単にヒットするようになりました。それだけ普及してきたということなのだと思います。
で、このBOX額で大事なのが、露出している側面の処理をどうするかです。通常はフローティングキャンバスという、側面にタックを打たず、裏側でタッカー留めするスタイルのキャンバスを使うので、側面まで絵を描くことができます。なので、絵をそのまま伸ばして縁まで描くというのが、わりとよくとられている方法です。あとは、絵の中の一色を使ってベタに塗るとか、また、側面も一面と捉えて全く別の画面を描くなど様々です。
なぜこの話になったかというと、この見せ方に近い要素が、升にもあるからです。というのも、升の底面を正面にして壁にかけると、Squareの、ちょっと厚みのある木製パネルのようになります。『マスだ!展』では、このアングルで作品を作っている人が最も多いかもしれません。
その場合、画面の側面は、キャンバスやパネルでいう側面(縁)です。しかも縁が、通常の支持体よりもかなり広くなっています。目立つので、気合を入れて描かなければなりません。これが、側面処理を工夫して仕上げる勉強にもなります。
小さな作品を作る感覚を養う
それとはまた別の話ですが、ポストカードサイズやトレカサイズ、ミニスクエアなど小さな作品は人気があります。
市販のキャンバスやパネルなどは、かつては0号が最小でしたが、今は10センチ四方のミニキャンバスなども作られています。市販ではなくても、アーティストがオリジナルで、小さなキャンバスや変形のパネルを作ることもあります。
日本は部屋が狭くて壁も少ないので、限られた人でなければ、大きな作品をゆったりたくさん飾るのは難しいですよね。小さければ、ちょっとしたスペースに飾れるし、それに小さい作品は無条件に可愛いいです。
わたしも、自称ミニコレクターなので、アート作品はよく購入しますが、やはり壁問題は課題です。購入する作品は、できるだけ0号以内、大きくてもSMホール程度の大きさで押さえておかないとたくさんかけられないし、買ったのに飾らないでしまっておくなんて残念すぎますから。最大限に大きくても6号ぐらいまでが限度です。
それに、大きな作品を見て圧倒された大好きなアーティストの作品が、手のひらに収まるような小さなサイズでも楽しめるというのは、アート好きにはとても嬉しいことです。アーティスト自身としても、そんなふうに楽しんでいただけるためにも、作品要素を小さな画面にぎゅっと凝縮させる感覚と技術を、どんどん養っていければいいなと思います。
ちなみに一合升の大きさは、底面が約8.5センチ四方、縁の高さは5.8センチです。画面は10センチ四方よりもちょっと小さい、でも厚みはかなりある。これを考えても、升で作るとコロンとして可愛い作品になりそうですよね。
3,000円から買えるミニアート
そして大事な点なのですが、ほとんどの作品は、サイズを小さくすれば値段を安く設定することができます。
日本は、海外と比べると、絵などの美術作品を購入する習慣がびっくりするほどありません。「絵を買う」というと、何か特別な高尚なことのように捉えられがちです。美術館に行く人は世界中でも圧倒的に多いのですが、それと反してギャラリーに行く人はごく限られていたりします。
たとえばちょっとした小物を買うように、構えることなく気軽に作品を買って楽しんでもらいたい、日本もそうなってほしい、というのは、アーティストがずっと思い描いてきた夢でもあるんですよね。その夢に近づける要素が、『マスだ!展』にはたくさんあるとわたしは思っています。
ちなみに『マスだ!展』の作品は、1点3,000円から10,000円ぐらいまで。いちばん多い価格帯は、3,000円、または5,000円あたりでしょうか。とくに統一された基準があるわけではなく、作家それぞれが自分でつけた値段です。美術作品の値段のつけ方というのがまたいろいろあるのですが、それはまた別の記事で解説しますね。
まずは、この可愛い作品達を、見て楽しんでいただけたらと思います。お近くにご用の際は、ぜひお気軽にお立ち寄りくださいね。
今週の土曜日まで開催しています。
『第15回マスだ!展』は、1月10日水曜日から1月20日土曜日まで。
月〜木 12:00~19:00 金 12:00~20:00 土日 11:30~17:00
銀座 K’s Gallery
中央区銀座1-13-4 大和銀座一ビル6F(1に鈴木画廊がある建物です)