裸婦モデルさんを描くときに厳守すること。

デッサンや油彩でモデルさんを描く場合、厳守しなければならない掟ともいえる決まりがいくつかあります。
とくに裸婦モデルさんは、無防備な状態であるだけに、精神的にもナーバスになっていらっしゃる場合があります。感謝の気持ちをこめて、精一杯真摯に対応したいものです。
以下にあげた注意事項は、武蔵美通信スクーリングで出席をとるたびに、伝達事項として再三忠告された内容なのですが、なるほどと納得することばかりで、とても勉強になりました。モデルさんを描く場合の対応は、まさにこれらに尽きると思います。
以来、わたしは、学校外で一般のクロッキー会やデッサン会などに参加する場合も、これをベースに考えるようにしていますし、個人的にもしもモデルさんをお願いすることになった場合も、この掟に準じて対応しようと思っています。

裸婦モデルさんを描く場合の注意事項

・1回のポーズは基本20分間です。5分間休憩して、また20分。これを一日くり返します。
この20分間が始まったら、私語は一切しないこと。多くのモデルさんは、プロとしての誇りを持って臨んでおられます。始まったら、集中して真剣に臨みましょう。
モデルさんの中には、私語にはとても厳しい方もいらっしゃいます。慣れて気がゆるんでくると、モデルさんがポーズを開始しているのに、まだ休憩時間の延長のようにおしゃべりをしている学生がいます。彼らに対して、「もうポーズ始まっています!」と注意してくださるモデルさんも。そんなこと言わせないようにしたいものです。

・ポーズ中は、ドアの外に『ポーズ中』という札をかけて、アトリエの出入りは禁止となります。なので、20分間のポーズが始まる前には、必ず部屋に入ってスタンバイしていなければなりません。また、ポーズが始まったら絶対にドアを開けてはいけません。トイレなどで開始時間に遅れた場合は、その20分間が終わるまで部屋の外で待っていること。また、20分間のポーズが終わるまでは、絶対に部屋を出てはダメです。

・部屋を出入りするときは、内カーテンを閉めてからドアを開け閉めすること。ポーズが終わって部屋の外に出る場合にはとくに注意しましょう。というのも、ポーズは終わっていても、モデルさんがまだ衣類を着用していないことがあるからです。トイレに急ぐあまり、モデルさんがまだ衣類を着ていないのに、全部開けっぱなして出て行った人もいました。必ず内カーテンをぴったり閉めてから、ドアを開けるようにしましょう。

・空調はモデルさん最優先で調整します。学生は服を着ているので暑いと感じていても、モデルさんが全裸や薄着の場合には、寒く感じる場合が多いです。寒いと言われたらすぐに温度を上げて調整します。こちらが暑くても、勝手に温度を下げたりせず、我慢します。熱中症にならないよう、こまめに水分をとりながら受けましょう。

・いうまでもないことですが、たとえ資料用であっても撮影は一切禁止です。また、ポーズ中はカメラや携帯、スマホも使用禁止とされています。手元に置いて置くのもダメ、カバンの中にしまいましょう。まったく別件で違うものを見ているのだとしても、スマホを触っていること自体、ストレスを感じさせることになります。

・その他、モデルさんによっては、自身で注意事項を決める方もいらっしゃいます。絵画Ⅳを受けた時は、前と後ろにある出入り口のうち、後ろはモデルさんが専用で使いたいということで、学生はそのドアから出入りしないでほしいと希望されました。イレギュラーの規則なうえ、そのときは参加人数も多かったのでなかなか浸透せず、けっきょく張り紙に大きく『モデルさん専用出入り口。 学生は前方出入り口を使用』と、マジックでわかりやすく書いて貼っておくことになりました。

いま思いつく限りでこれぐらいですが、たったこれだけでも、残念ながら守られないことがよく起こるのが現実です。うっかり遅れて入ってきて、あわてて席に着いたり、描きながらスマホを触っている人がいたり。一日16回もあればゆるんでくるのも無理もないですが、気を引き締めて対応したいものです。

一回20分、間に5分の休憩をはさみながら一日計16ポーズ

人体(モデルさん)を描く場合、だいたい1ポーズ20分間で、間に5分の休憩をはさみながら、これを延々くり返します。午前中、午後、それぞれ8ポーズずつ、一日でじつに16ポーズです。午前中に一度、午後に一度、15分間の休憩もありますが、それでも、相当ハードなスケジュールです。
一例をあげるとこんな感じです。

この一覧は絵画Ⅳを受けたときのタイムスケジュールです。初日は開始前に前提講義、最終日は終了後に講評会があって、そのぶん減りますが、2日めは朝から夕方までフルで16ポーズあります。
最も大変なのはモデルさんですが、わたしたちも、このタイムスケジュールに合わせて自分のペースを調整しながら描かなければならないので、なかなかキツいです。
わたしも、この頃とても体調が不安定だったこともあり、かなり緊張して臨みました。前日は睡眠をしっかりとって、じゅうぶん体調を整えて参加することをお勧めします。