絵画ⅢA、4号館が好きすぎて自分のアトリエにしたい。

武蔵美通信では、絵画Ⅲ~絵画Ⅵまでは、A系とB系に分かれて授業が行われます。いわゆる、具象系と抽象系ですね。
(2021年以降は、絵画表現Ⅲ~Ⅵと言う名称の科目が、これに該当するのかもしれません)
わたしは、自分の作品に行き詰まって武蔵美通信を受けたいと思っていた頃から、抽象画を基礎からきちんと(という表現が合ってるのかはわかりませんが)学んでみたいと思っていたので、ここは迷いなくB系に進みたいところでしたが、抽象画をやるには具象画をもっと極めてなければという、なんだかよくわからない使命感みたいなものに囚われてしまって、絵画ⅢはA系を選びました。

▼シラバスの概要はコチラ▼
https://cc.musabi.ac.jp/campus/wp-content/uploads/sites/2/2018/03/2018senmon_kaiga.pdf

受講:2017年 夏スクーリング

武蔵美通信スクーリングで裸婦モデルを描く場合の心得的なこと

裸婦モデルは、前年の『絵画Ⅱ』と『デッサンⅠ』のスクーリングでもやったので三度めですが、過去2回の授業で、モデルさんがいらっしゃる場合はとてもデリケートな対応をするものだということを学びました。

▼コチラもぜひ参考にしてください▼

裸婦モデルさんを描くときに厳守すること。https://kayoko611.com/rule-of-nude-model

スケジュールは、一日で、20分間のポーズを全16回。20分間のポーズごとに5分間休憩、午前と午後に一度ずつ、少し長い15分間の休憩があります。
これは絵画Ⅳのときたまたま撮ったタイムスケジュールですが、モデルさんがいらっしゃる場合はだいたい同じような感じで行われます。

20分間のポーズ中は、学生は部屋への出入りをしてはいけません。つまり、ポーズが始まる時間には部屋に入ってスタンバイしていなくてはならず、20分が終わるまでは何があっても部屋を出てはいけません。休憩時間にお手洗いや買い物に行ってポーズ開始にもし遅れた場合は、その20分間は参加せず、外で待っていなくてはならないのです。
わたしは絵画Ⅲのスク中、大事なスマホを紛失してしまって、すぐに手続きをするために休憩時間を過ぎてしまい、1ポーズだけ休んでしまいました。いろんなことが立て続けに起きて踏んだり蹴ったりの年だったので、まぁしかたないかなと諦めました。誰もいない外のベンチで一人で待っているときの何とも言えない気持ちは、不思議と今でも印象に残っています。

まる一日、ポーズ時間に合わせて自分のペースを調整するというのは、慣れないうちはけっこうきついです。ですがそのうち、皆が集中してシーンと静まり返った中で制作に没頭していると、サラサラという音がとても心地よく聞こえるようになってきます。参加した人がほぼ全員、年配の方も含めてこのスケジュールを乗り切ったことを思えば、意外と大丈夫なんですね。
そういった中では、15分間の休憩というのは意外とゆったり感じられて、まるでご褒美のようでした。わたしは午前中の15分休憩は、たいてい、エミューに行って冷製コーンスープを買ってきてエネルギー補給をしていました。あんまり毎日行ってたので、何も言わなくてもレジのお姉さんが「コーンスープですね」と出してくれるようになったぐらいです(笑)。

ホームだと嬉しい4号館2階アトリエ

さて、前提講義で注意事項や歴史的な巨匠の作品、前年までの参考作品を見たあとは、実際に授業が行われる場所に移動します。今回は4号館の2階。
鷹の台キャンパスでいちばん最初に受けたスクーリング『絵画Ⅰ』が4号館で行われたせいか、わたしは4号館が大好き。自分が授業を受ける教室が4号館に割り当てられていると、なんだかホッとします。らせん階段を上がって2階へ行く動線も気に入ってるし、外テラスの陽射しも(真夏で暑いのに!)気持ちいいし、三角の屋根から光が降り注ぐ様子もとても癒されます。なぜかはわかりませんが、とても懐かしい感じさえして、自分のアトリエを持つなら、こんな空間がほしいなと思うぐらいです。
機能的にも素晴らしくて、お手洗いも広く混むことはめったにないし、自販機も充実しているし、エミューが近くてすぐ行けるのもとても助かっています。

『絵画Ⅲ』のテーマは「自然と生命」

今回のテーマは「自然と生命」です。
指導書も読み、通信課題にもちょっとだけ取りかかっていたので、だいたい大まかにイメージはしていましたが、平たく言えば「植物と人体」がモチーフです。
観葉植物の鉢がたくさん置いてあり、それらに取り囲まれるようにモデルさんがポーズをつけてくれます。

植物と人との関係性を重視して描くのですが、ようは植物が人体の添え物にならないように、このふたつの関係性を考えて描く、ということでしょうか。

人体を描く参考になればと、別に履修していた「美術解剖学」の教科書も持っていきました。

前半3日間はクロッキーとデッサン

『絵画Ⅲ』前半の3日間は、クロッキー数枚とエスキース、鉛筆または木炭デッサン1枚の提出です。
スクーリング前に画材屋さんに行ったとき、勢いで買ってしまったファーバーカステルのパステルを使ってみたかったので、クロッキーで使用しました。発色がよくてびっくりなのですが、それにともなって筆致もグイグイ乗ってくるのも不思議です。

そのとき一緒に買った「カリスマライン」というチャコールペンシルがとても素晴らしくて、以後もずっと愛用しているのですが、もう生産が中止されたみたいで残念です。

一緒に受けている友人が、サクラクレパスから出てる、ちょっと高級なプロ用のオイルパステルがとても描き味がよいと教えてくれたので買ってみたら、これがまたとてもよかったので、全色セットをアマゾンでポチッてしまいました(笑)。

これを教えてくれた彼女は、まだ二十歳で経済観念もしっかりしていて、気に入った色を一本だけ買っていましたが、こちらは大人なのでオトナ買い。なーんかイヤらしいよなぁと思いつつ(笑)、一緒に見かけた別の安いクレヨンまでポチる始末。安い方はこんなのが届いて愕然とします。

その後、ファーバーカステルのオイルパステルで、なんだか色数が多くてとても安いのをみつけたので、またまた思わず購入。そのあたりで、わたしのオイルパステル収集癖はひと段落しました。


けっきょく、彼女が教えてくれたサクラクレパスがいちばん描きやすかったです。

話が脱線してしまいましたが、木炭デッサンは、人体と植物をなるべく接近させて描きたいと思いました。わたしは日頃からダイナミックな構図が好きで、何を描いても、モチーフが大きく見えるよう、構図が大胆になるよう収める傾向があります。今回も実際のモデルさんよりもあえてボリュームをつけて描きました。

植物は、大ぶりなアレカヤシを人体とからめる感じで。このヤシの葉が細かくて、塊でとらえなくてはと思うのだけど難しくて処理に困り、この部分だけなかなか進行せず。
最終的にはこんな感じに仕上げました。

このヤシをキーワードにしたので、右股に葉の影を入れてみたら不思議感が出て、ちょっと気に入っています。
ずいぶん後になってからですが、この時のI先生と話をしたとき「あの作品はなかなか面白かった」と言っていただき、ちょっとほっとしました。

『絵画Ⅲ』後半3日間は油彩

武蔵美通信『絵画Ⅲ』スクーリング、後半3日間は油彩です。講師はY先生。
キャンバスの大きさはF30号。この頃になると、30号あたりがちょうど描きやすくなってきます。手をわりと大きく自由に動かせるし、細かいところも描きやすくて、3日間で仕上げるにもちょうどいいくらいです。
逆光で描いたので、人体をグレイッシュな色合いにしていたのを、先生に明るいほうがいいと言っていただいて妙に明るくしてみたり、かなり迷走してどっちつかずの作品になってしまったなぁと反省しています。
評価はそこそこ(85点ぐらい?)よかったし誉められもしたのですが、どうも消化しきれないもやもやした感じが残りました。

『絵画Ⅲ』で学んだこと

植物の生命感と人の生命感を絡めて描く、という課題はかなり難しいものでした。人を主体にすればどうしても植物が添え物になり、植物にも存在感を出そうとすれば今度は主役がどっちつかずになって絵としてのまとまりに欠ける気がしてきます。
学生の中でも、お手本として先生が示すほど評価が高かった作品は、たとえば自然が画面いっぱいに描かれていて、その中に人がぽつんと立っているような、空間を意識した構図の作品でした。課題の意図はつまりそういうことなのだろうなぁという気はしたのですが、「自然の中に人がいる」という意識がわたしには足りないのだろうかと、かなり悩みました。
いずれにしても、おそらく、わたしは一生描かないだろうと思えるようなスタイルで、この件は自分の中ではまだ解決していません。
この後、じつは絵画Ⅲの提出課題も再提出になってしまうので、やはりほんとうに消化できてなかったのだろうと思います。
これは経験の一つとして、記憶に刻んでおこうと思います。