大型キャンバス作品、どこに配送を頼む?
50号や100号の絵を描いて、展示したりコンクールに応募する場合、その大きなキャンバスを一体どうやって送ればいいのか、どこに頼めば運んでくれる のか、よくわからないことってありますよね。そんな、大型作品を送る・運ぶ場合の配送事情を解説します。※状況の変化によって、できるだけ随時加筆訂正します。
キャンバスを運ぶ距離によって方法も変わる
まず、キャンバスを運ぶ距離によって、事情は変わります。
例えば東京都〜埼玉県など、比較的近距離の場合と、同じ東京都からでも、北海道や福岡など遠距離の場合。そして海外に送る場合。
また、大きさによっても異なります。
大まかには、S50号ぐらいまでと、それ以上〜F100号ぐらいまで、さらにそれを超える大きさの、3段階ぐらいで事情も分かれてきます。
以下に、わたしがふだん利用している配送・運搬方法の例を挙げておきますので参考にしてください。
50号程度までのキャンバスを配送する場合
宅配便で50号程度までのキャンバスを送るなら、現在のところ最も便利でリーズナブルなのは佐川ラージ便。
3辺合計260cm以内、重さ50kg以内までの荷物が送れます。
例えばF50号なら、キャンバスサイズは1167×910mm。厚さ30mmとして、梱包材の厚みをそれぞれ5cmずつ足しても、プラス30cmで合計211cm。260cm以内なら余裕ですよね。
S50号だとどうでしょうか。1167+1167+30=2364mm 余裕が2600-2364=236mmあるので、梱包材の厚みを3〜4センチ以内に抑えればギリギリ大丈夫です。
また、西濃運輸も、営業所に自分で持ち込むなら配送を頼めます。
ちなみに、よく間違えられるのですが、クロネコヤマトには、この大きさを送れるサービスは現在ありません。
送れる上限は、3辺の合計200cmまで、一辺の長さは170cmまで。上下逆さまにしてはいけないなどの指定がある場合は、一辺の長さ100cmまで。重さは30kgまで。梱包材の余裕もみると、F30号ぐらいまでなら送れることになります。額や箱などをつけるなら、もっと小さいサイズ=20号ぐらいまでになるかもしれません。
また、お住まいの地域によって、安く引き受けてくれる地元の配送業者さんもあるようなので、問い合わせてみることをお勧めします。お得意さんになれば、事情を理解してもらえやすいですよね。
近距離なら、宅配で送る以外に、車で運ぶ方法もあります。
F50号までなら、自家用車の後部座席に余裕で乗せることができます。カーシェアリングやレンタカーを借りる場合でも、一般的な乗用車でじゅうぶん。小さめのリッターカーや軽ワゴンでも大丈夫です。あんまり小さい軽自動車には、すみません、積んだことがないので今度試してまた報告しますね。
また、赤帽などのチャーター便を頼むという方法もあります。近距離ならお値段も手頃です。
わたしがよく利用しているのは、配送マッチングアプリの「ハコベル」です。
お付き合いがあれば、馴染みの画材屋さんがお得意さん価格で運んでくれる場合もあります。
展示によっては、画材屋さんが提携してる美術運送業者さんに頼める場合もあるでしょう。
あとは、あまりおすすめはしないですが、混んでなければ電車やバスでもギリギリ運ぶこともできます。
JRでは、タテ・ヨコ・高さの合計が250cm以内、長さは2mまでと決められているので、シートなどで簡単に覆った状態で、S50号までなら大丈夫。知人が、新幹線でF50号を運んだというのを聞いたことがあります。早めに予約して、一番後ろの座席をキープすれば、より安心して置けますね。
バスの場合は、会社によって規定が様々です。ちなみに、わたしがふだん利用している都バスは、JRと同じ規定でした。それプラス、片手で持てること、という条件もついています。大きさ制限からいえばS50号まで大丈夫そうですが、ただ、乗る時や降りる時、とくに運転手さん側の出入り口での取り回しなどを考えると、現実的にはF50号ぐらいまでかなぁという気もします。
小田急バスでは、路線バスの場合、総容積0.027m3、重さ10kg、長さ1mまで。空港連絡バスやハイウエイバスになるとまた違うようです。利用する前には、必ずバス会社に確認しましょう。
100号以上のキャンバスを運ぶ
100号以上と一言に言っても、100号のキャンバスを送る場合と、100号以上のキャンバスを送る場合とでは事情が変わります。
まず、佐川ラージ便で運べない、60号〜100号ぐらいまでの場合。
西濃運輸ならたぶん引き受けてくれます。壊れないようしっかりと頑丈に梱包して、自分で営業所に持ち込むことができれば、送ってもらえると思いますが、念のため営業所に問い合わせたほうが確実です。大きさ制限のフォーマットなどもないので、送りたい大きさと送り先を伝えて、個別に見積もりを出してもらうことになります。
100号よりも大きいサイズ、例えば120号とか130号の場合も、個別に見積もりを出してもらえば送れるかもしれません。
また、以前ヤマトで相談したとき、宅急便を超える大きさの荷物は「らくらく家財宅急便」を利用するようにと言われたことがあります。3辺合計450cm以内まで送れるのですが、見積もりを取ると、なんだかもう話にならないような金額でした。たぶん現在では、ヤマトロジスティクス美術品部門に相談するしか方法はないのだろうと思います。
大きいキャンバスでも、近距離なら車で運ぶという方法もあります。
まず赤帽などの場合、通常の荷台の大きさなら、少し斜めに積みますが、F100号までは運べます。
S100号を運ぶなら、幌つきの軽トラを所持している業者さんなら縦に積むことができます。
また、少し金額は高くなりますが(3万円程度〜)、小型トラック便をチャーターすれば、長さ3m、高さ180cmまで載せられます。
自家用車、またはカーシェアリング、レンタカーを借りる場合だと、わたしの経験からいえば、NISSANのNV200バネットなら、後部座席を倒して、積むときに少し斜めに傾けますが、F100号までならギリギリ横に寝かせて積むことができます。
ミニバンだと、助手席を倒せば、F80号までは立てたまま積めましたが、これは車のメーカーによるかもしれません。あと、もっとも融通がきくのは軽トラです。
ここからは追加ですが、最近、急にF100号を運ぶ案件ができてしまいました。付近のカーシェアリングやレンターを探しましたが、連休中だったこともあってなかなか見つかりません。
たまたまTOYOTAセレナを2時間だけ借りることができたので、スペックを調べて積載スペースを確認し、ちょっとハラハラしながら借りてみました。
結果は、なんとか入った、という状況でした。
シートが3列の乗用車なので、まず3列目の席を畳んで左右に跳ね上げます。2列目のシートはギリギリまで前に寄せて、背中を倒してフルフラットに。間の物入れも最大限スライドさせて前に避けます。後ろのハッチのドアはフルで開けておきます。
そうしておいて、そっとキャンバスを差し込み、下側(この場合右座席)のあたるシートの背中を少しずつ上げてスペースを作り、奥まで移動します。
こんな感じ。とにかく、スペースのサイズとしては入るはずでも、中は障害物だらけなので、それをどうやってかわして、パズルのように入れていくかという話になってきます。
このときは、仮額をつけたF100号を梱包ぜず1枚だけ積んだのですが、もしもダンボールなどで梱包していたら、たぶん入らなかっただろうと思います。梱包なし、額装もしてないキャンバスだけなら2〜3枚は積めたかもしれません。
さて、F100号まではなんとかなっても、難しいのはS100号です。
これを自力で運ぶなら、軽トラに頼むしかなさそうです。
幌つきの背の高いタイプなら、立てたまま固定して積むことができます。
幌つきじゃないタイプなら、斜めにして、片方の縁に乗せるようにすれば、少しはみ出しますが載せることは可能です。
以前は法律上、横に車幅よりも長くはみ出してはいけなかったのですが、今は改正されて、1割までははみ出ても良いことになっています。これもけっこうギリギリですが。
ちなみに軽トラは、F100号なら、横にして荷台に乗せることは可能です。5〜6枚は積めました。
いずれも、借りられる店が少ないので、早めに予約して運よく借りられれば、運ぶことができます。
↑ S100号2枚を梱包して、軽トラに乗せて西濃運輸の営業所に運ぶところ。こんな感じでフチに立てかければ載せられます。はみ出している幅はバックミラー程度ですが、周囲の車と接触しないよう運転にはじゅうぶん注意しましょう。
ちなみに、一度でも送ったことのある人なら知っていることですが、キャンバスを送るときには、品名を「絵画」とは書かないようにしましょう。「キャンバス」または「パネル」などの原材料名を記入します。額装した作品を送るときは、品名は「額、アクリル」などのように書きます。ガラス入りの額はまず引き受けてもらえないですし、「絵画」と書けば美術品専門業者に頼むよう勧められます。保険をかけるときも同様で、キャンバス代に画材代や梱包材など材料を足してプラスアルファしたぐらいの金額にとどめておきます。これも、売値などをそのまま記入すると、美術品扱いとなります。
以前は、「キャンバス」と書くと、真っ白なのか絵が描いてあるのか追求されたりしましたが、最近では事情もずいぶん通じるようになって、キャンバスと書けば暗黙の了解で送ってくれるようになりました。
どんなサイズのキャンバスでも送れる奥の手とは
最後に、どんなサイズでもどこへでも、比較的安く送れる奥の手は、キャンバスを剥がして、木枠も分解して、全てをロール状にまとめて長尺荷物として送る、という方法です。
以前、九州の福岡に住んでいた頃に、福岡市美術館でグループ展をする話が決まったことがあるのですが、展示の2ヶ月前になって急遽東京に戻ることが決まってしまいました。他のメンバーは福岡在住ですが、わたしだけ東京からの参加となったのです。美術館の中のギャラリーで、大きな展示室なので、作品もそれなりに揃えなくてはなりません。
いろいろ考えて、S100号2枚、F100号2枚、F50号2枚、あとは小品を8点程度展示することにして、100号4点は木枠を諦め、剥がして筒状に丸めて、F50号2枚、小品8点はそれぞれ梱包して、3個口にして佐川ラージ便で送りました。
木枠は送らず、100号4点は直接壁に画鋲で貼って展示しました。キャンバスに張って額装した時とはまた違う見え方で、迫力があって評判もよく、その時のわたしの作品には合っていたように思います。自主的なグループ展だったので、額装に関する決まりなどもなく全部自分たちで好きなようにできたのも幸いしました。
この方法は、荷物の着地で、自分で展示などの作業ができる場合か、誰かやってくれる人がいる場合に限られます。
こういう臨機応変な発想ができたのは、武蔵美通信の課題提出で、キャンバスを剥がして丸めて送る方法を教えてもらったこと、またインスタレーションの授業を受けたことで、展示空間全体の中で、既成概念にとらわれず作品を配置・展示する感覚を養えたことが大きかったと思います。
↑ 剥がしたキャンバスを壁に直接画鋲で留めています。