水張りを簡単キレイに仕上げるちょっとしたコツ。
水張りは、あらかじめ水で濡らした画用紙などをテープやホッチキスなどでパネルに貼っておくことを言います。水彩画や日本画、デザインの平面構成などで水を使う作業をする場合、あらかじめ画用紙や水彩氏、雲肌麻紙などの和紙、ケント紙などをパネルに張っておけば、水で紙がブヨブヨに波打っても、乾いたらぴんと元どおりフラットに戻ってくれます。これは、紙が濡れているときは伸び、乾くと縮む修正があるためです。
水張りは何のためにするか
水張りの目的は、作業をしやすくするためです。水をたっぷり使って描画したとき、紙が水を含んで波打ってしまっても、パネルに張っておけば、乾くにしたがってピンと元に戻ってくれます。
なので、たっぷりと水を刷毛で塗って、たらしこみをしたり、滲みを使って描いたり、絵の具を流したりと、いろんな技法を使うことができます。
作品を仕上げたあとでパネルから剥がしたときが圧巻で、用紙がガラス板のようにピンと平らで、額装するときにもとても美しく仕上がります。
また、パネルそのものは軽いので、パネルと紙が一体になっていると、手で持って動かしたり傾けたり逆さまにしたりできて、とても描きやすいです。
そんなわけでわたしは、水を使わないときでも、たとえば鉛筆デッサンや素描をするときも、パネルに水張りして描くことが多いです。
水張りで用意する道具と材料はこれだけ
●パネル
木製パネル。最近は表面が滑らかで白っぽい「シナベニア」が人気ありますね。
●用紙
水彩紙や画用紙、ケント紙など、使いたい紙を用意します。今回は画用紙を使用します。
パネルから少しはみ出す大きさがあれば大丈夫。
●ミューズテープ
切手みたいに裏に糊がついていて、水をつけるとくっつくテープです。色も巾も種類がたくさんあります。パネルに水張りするなら、幅は25ミリでオッケイ。色は黒、グレー、深緑、クラフト、白ぐらいがあります。わたしは隣り合う色を意識しなくていいので、用紙の色に合わせて白を使うことが多いです。クラフト紙を水張りしたときにクラフト色のテープで張ったら、なかなかいい感じでした。
保管には要注意。濡らさないように、ジップロックなど湿気の入らない袋に入れておくといいですね。お菓子や海苔についてた乾燥材も一緒に入れるとベスト。
●刷毛
いろんな大きさ・厚み・形のものがありますが、何でもオッケイ。
持ってない場合は、タオルを濡らして代用することもあります。
購入するなら、「デザイン刷毛」というのが安いし、やわらかくて使いやすいかもしれません。
●水(水入れ、バケツ、ボウルなどに用意)
これも、水が入れば何でもよし。絵を描く人なら筆洗で充分です。
●ハサミ
特に指定はありません。切れればいいです。
水張り・基本編。パネルに水張りする手順
まず、画用紙の上にパネルを置き、大きさを確認します。
画用紙が大きすぎる場合は、パネルの大きさに合わせてカットします。
目安は、パネルよりちょっとはみ出すぐらい。はみ出しは、パネルの厚みの半分ぐらいが目安です。パネルの厚みより大きく切ってしまうと二回折り込まなければならず、とてもやり辛いので注意しましょう。
画用紙を裏返しにして水を引きます。縦、横、斜めに刷毛を動かし、水でイギリスの国旗のような模様ができたら、全体を塗りつぶしてムラなく行きわたらせます。
しばらく待って画用紙がふやけてきたら、パネルを裏返しにして画用紙の上に置きます。このとき、折りしろが均等になるように確認します。
桟のところを持ってパネルと紙を一緒にひっくり返し、画用紙を伸ばしながら密着させて、淵の余った部分をパネルに沿って折ります。
水張りで失敗しないちょっとしたコツ
このとき、よくある失敗は、画用紙の角を畳み込むときに、力のかけ方が変わってちょっとずれてしまい、乾いたときに角がひきつれてしまうことです。
これを避けるちょっとしたコツですが、画用紙がパネルの上にあるとき、こんなふうに角を斜めにカットして切り落としておくと、畳み込むときに失敗がありません。
ミューズテープをパネルの長さに合わせて切り(あらかじめ切っておくといい)、刷毛で水をつけます。水入れのフチに刷毛を固定して、テープをさっと滑らせるとやりやすいです。
テープを画用紙のふちに貼ってゆきます。折り目から2ミリ程度離して貼るようにします。
画用紙のフチを折り込んで、圧着させます。テープが画用紙から離れないよう注意しましょう。
まず短い辺のひとつを貼ったら、縦に紙を伸ばすようにして向かいの短い辺を折って貼ります。
今度は長い辺にテープを貼って中央から紙を伸ばすようにしてフチを折って貼り、反対側も同様に貼ります。
テープをしっかり押さえて圧着し、乾いたら完成です。
ちなみに、角を切り落したくない人は、折りながら貼らなくてはなりませんが、その場合は、一度に紙を折って角を作るのではなく、二度に分けて貼ると貼りやすいです。
まず長い方向に手で押さえながら面を折り込み、フチを圧着させて下へ。貼って余った部分を90度横に折って留めます。
短い方向も手で押さえながら折り込み、上からかぶせるように、折って留めます。一度に角を作るのではなくて、二段構えにする感じですね。
その他、水張りのいろいろな方法
刷毛で水を塗る代わりに、霧吹きで湿らせたり、濡れたタオルで代用する場合もあります。中には、お風呂場でシャワーをかけたという強者もいました。ようは均等に水で塗らせばいいので、ほかにも代用できるものがあれば使用していいと思います。
また、ミューズテープでとめるのではなく、タッカーやホッチキスでとめる方法もあります。手近にあるもので済ませたい場合は使用するといいですね。
また、日本画で雲肌麻紙などの和紙を水張りする場合は、まずパネルのフチに「捨て糊」と言って、一度糊を塗って木に吸い込ませ乾かしておきます。それから、和紙を裏返して水を塗りますが、このとき「返し刷毛」(左から右へ塗ったら、右から左に塗り返すこと)をせず、横方向に左から右へ刷毛を動かして水を塗り、刷毛を裏返してまた左から右へ、また裏返して左から右へと、同じ方向に表裏を使いながら塗ってゆき、次に縦方向に同じように、返し刷毛をせず同方向に塗ってゆきます。そして、紙を裏返してパネルに張り、フチを糊で貼ってゆき、角の三角に余った部分はどちらかに折り込むか切ります。
理由はわかりませんが、日本画ではこれが作法のようになっています。
水張り・応用編
洋画の場合は、パネルじゃなくても、手軽にそこらへんにある板に張ってもオッケイです。
これは、ダイソーで売ってる板にB4の画用紙を水張りしたもの。
わたしは、アクリル画の小品を描くときに、よくこの方法で水張りします。
このあとぴんと伸びました。紙を回り込ませなくていいので、板はらくちんですね。
このほか、もっと小さい絵を描く場合は、ダイソーで売ってるF3号のキャンバスボードを使います。
厚めの段ボールに、水を使わずに貼る簡易張りをする場合もあります。
水張りの主な目的は、水を使って描いたときに生じる紙の波うちを元に戻すこと。それができれば、材料は自分なりの工夫で何でも使える、ということですね。