真田広之さんとバスキア

『SHOGUN』でエミー賞を受賞された俳優の真田広之さん。じつはずいぶん昔、取材で一度だけお逢いしたことがあります。その時の話をちょっとだけ紹介しています。


まずはエミー賞おめでとうございます!

9月16日、2024年プライムタイム・エミー賞が発表されました。
真田広之さんがプロデューサーの『SHOGUN 将軍』がドラマ・シリーズ部門作品賞受賞。
真田さんは主演男優賞も受賞。主演女優賞をアンナ・サワイさんが受賞されました。
授賞式の様子、画像などがあちこちで見られますが、なんともかっこいい64歳ですよね。

 

真田広之さんはこんな人


俳優・真田広之を知らない人はいないと思うので、今さらご紹介するのもナンですが、
1960年生まれ、6歳で子役デビュー、JAC(ジャパンアクションクラブ)に入団したのは1973年だそうなので13歳。そして1989年に独立。
子役の頃にちょっとだけ休業期間がありますが、アクションもできる俳優として、数々の国内外の映画やドラマ、舞台などでずっと活躍されています。
アクションのある役、時代劇の殺陣もとても素敵ですが、わたし個人的には、キョンキョン主演の映画『怪盗ルビイ』の、オタクっぽくてちょっと冴えない、でもとても優しい男の子役の真田さんが、すごく印象に残っていて好きだったりします。
それはともかく。

真田広之さんにインタビュー


で、ここからが本題なのですが、わたしがまだ新米の記者だった頃、一度だけですが、取材で真田広之さんにお逢いしたことがあります。
具体的な雑誌名は避けますが、週刊のその雑誌では、巻頭で話題のドラマの主役、特に若手アイドルのグラビアなどを掲載し、それとは別に後ろの方に、ベテランの役者さんたちにじっくり話を聞いて記事にするモノクロのインタビューページがありました。役柄について、役者という仕事について、時には人生についてなど、30分程度お話をお聞きして、2ページの記事にまとめるのです。どれぐらいのベテランかというと、例えば他に、当時でいえば佐藤浩市さんや小林稔侍さん、佐野史郎さん、森本レオさんなどに取材をお願いしています。

真田さんにお話が聞けたのは、たしか先週までアメリカに行ってらっしゃって帰国したばかりというタイミングで、新ドラマの役柄についてのインタビューでした。というか、そうだったはずなのですが、調べてもその時期に該当するドラマが出てこなくて、そのあたりはちょっと不明です。
場所は、ドラマの控え室か事務所に伺ったかだったと思いますが、それもうろ覚え。真田さんとマネージャーさんとわたし、カメラマンの4人で、静かな空間だったように記憶しています。
そしてしかも、どんな話をしたのかもほとんど覚えてないという。
実は当時、真田さんはある女優さん(名前は出しませんが)とのスキャンダルの渦中でした。出かける前に編集部のクセの強いデスクから、「行くからには、何がなんでも彼女についての話を聞いてこい」と命じられて、「どうしよう。そんなこと聞けないよなぁ。スキャンダルはやらない方針だし」と、ずっと気に病んでたせいかもしれません。
ただ一つだけ覚えている話題があって、在米中の出来事などの話になったとき、こんなことをおっしゃってたんです。
「映画を見ました。バス……クゥイット?と読むのかな。画家の話なんですが、デビッド・ボウイがアンディ・ウォーホールの役で出ていて、それがすごく似てるんですよ。あれは面白かったなぁ」
聞いただけで見たくなるような、本当に面白いお話でした。まだ日本では上映されてない、これからだとおっしゃっていたので、その日から上映される映画を事細かくチェックするようになりました。
で、ある日、『バスケットボールダイアリーズ』という映画をやっているのを見つけて、「タイトルが似てるけど、どうかなぁ」と思いつつ、ダメ元で入ってみました。上映館が名画座だし、リバイバルっぽくて、たぶん違う感じだったのですが、看板の写真に可愛い男の子が写ってたのと、バスケットと名のつくものは全部見たいぐらいの勢いだったとで入ってみました。
けっきょく、アンディ・ウォーホールはとても出て来そうにない退廃的な話で、ティーンエイジャーがドラッグに溺れてゆくのを延々見せられたのですが、その主演の可愛い男の子が若い頃のレオナルド・ディカプリオで、その映画で初めて知ったというおまけがついたのでした。

Basquit =バスキアだった

 

その1年後ぐらいだったでしょうか、ある日突然、映画のスクリーンに映し出された予告編が、まさにその、デビッド・ボウイがウォーホールを演じた映画でした。『Basquiat』=『バスキア』だったのです。
主人公のアーティストは、ジャン=ミッシェル・バスキア。
アート好きの人なら誰でも知ってる、ストリート出身のアーティストです。
ちょうどわたしがアートを中断してライターの仕事をしている期間だったのですが、この時初めてバスキアを知り、のちに作品も見るようになります。もしかしたら、この映画を見たことが、絵を再開するきっかけの一つになったのかもしれません。
インタビューの内容はほとんど覚えてないのに、この話題だけ記憶に残っているのは、やはり絵を描くことがずっと心の芯にあったんだなぁと思ったりしています。

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